ドメインとサーバーの名義を誰にすべきかは、別の記事で結論を書きました。答えは「契約者本人(発注する事業者側)」です。この記事では、その結論をなぞるのではなく、もし制作会社名義で契約してしまった場合に、実際どんな場面で困るのかを具体的に見ていきます。ドメインとサーバーの名義、誰にすべきかで扱った論点の続きとして読んでください。
「困るタイミング」は契約直後には来ない
制作会社にドメインとサーバーの契約を任せても、サイトが動いている間は何の問題も起きません。困るのは、次のようなタイミングです。
- その制作会社に不満があり、別の会社やフリーランスに乗り換えたいとき
- 制作会社が廃業した、または連絡が取れなくなったとき
- 更新料や運用費の請求内容に疑問を持ち、内訳を確認したいとき
- ドメインを使ってメールアドレスを新設したい、DNSの設定を自分で変えたいとき
つまり、関係が良好なうちは表に出ない問題です。表に出た時点では、すでに選択肢が狭まっています。
名義が制作会社にあると、具体的に何ができないのか
ドメインの管理者(レジストラの管理画面にログインできる人)が制作会社であれば、事業者側はドメインの更新期限も、契約中のプランも、支払い状況も自分では確認できません。制作会社が「更新しておきます」と言ったまま更新を忘れると、サイトやメールが停止することがあります。多くのレジストラでは、期限切れ後も一定期間は元の契約者が復旧できる猶予期間が設けられているのが一般的ですが、その期間を過ぎると第三者に取得し直される可能性もあり、取り戻すには手間と時間がかかります。
サーバーも同様です。契約者が制作会社であれば、サーバー会社のサポート窓口に事業者本人が問い合わせても、契約者本人ではないという理由で対応してもらえないことがあります。乗り換えのためにデータを移そうにも、ログイン情報を渡してもらえなければ何もできません。ここで交渉が長引くと、その間サイトは止まったまま、あるいは古い状態のまま放置されることになります。
「今は良い関係だから」が効かない理由
円満な移管であれば制作会社側も協力してくれますが、支払いのトラブルや解約時の感情的なもつれがあると、「協力する義務」がどこにもないことに気づきます。契約書に移管手続きの取り決めがなければ、渡してもらえるかどうかは相手の判断に委ねられます。
もっとも、契約書に移管条件を明記していても、相手が実際に対応してくれるかどうかは別問題です。書面は交渉の材料にはなりますが、確実に守られるとは限りません。だからこそ、そもそも交渉が要らない状態、つまり名義を事業者側が持っている状態のほうが、はるかにシンプルです。
確認すべきは「誰の名義か」であって「誰が管理しているか」ではない
ここは混同されやすい点です。日々の運用や設定変更を制作会社が代行すること自体は、まったく問題ありません。契約主体(契約者情報と支払い名義が誰になっているか)が事業者本人であれば、日々の作業を制作会社に任せていても、いざというときの主導権は事業者側に残ります。逆に、作業は自分ではしないから、契約も任せてしまおう、という判断が今回の状況を招きます。
確認方法は単純で、ドメインのレジストラとサーバー会社それぞれの契約者情報、請求先情報、管理画面のログインIDが誰の名前・メールアドレスになっているかを見れば分かります。すでに制作会社任せで契約している場合は、次の更新のタイミングで契約者情報の変更(移管)を相談するのが現実的な一歩です。
なお、管理画面を持たない静的な構成という選択肢もあります。構成ごとの安全性と自由度の違いについてはセキュリティへの考え方で比較しています。